8つの力を備えた鍼灸師へ

01慈しみのこころ

私たち人間は、誰もが生きていくなかで悩みを抱いています。特に、身体の不調。痛みや病は人生という時間を辛いものへと変えてしまいます。そうした悩みや辛さを、東洋医学と鍼灸は「慈しみのこころ」に一本の鍼と一つまみのもぐさを携えて癒そうとしてきました。「誰かの役に立ちたい」という素朴な想いが、鍼灸師の核として必須です。

02観察する目

「病気で苦しむ人を何とかしてあげたい」という時、まずは痛みがどこにあり、本人はどのように感じているか、どこが辛いのか、しっかり現状を把握することが大切になります。そのためには、普段から私たちを取り巻く自然を見つめてください。なぜなら、人間は自然の一部でもあるからです。季節の移り変わりや気候の変化にしっかりと目を凝らし、それらに連動して変化する私たちの身体の状態を、とことん観察する目を持つことが大切です。

03気持ちのよい手

鍼灸師は自分の手を使って治療をしますが、患者さんの身体にも自分の手で触ります。脈を診る時は手首に触れることはもちろん、お腹や背中、頭や足先などさまざまな部位を触れさせてもらいながら、体の状態がどうなっているかを感じ取り、どこに鍼やお灸を施したらよいかを見つけていきます。手がセンサーとしての役割を果たすためには、まず第一に、触られて「気持ちの良い手」に磨きあげる必要があります。

04学び続ける力

患者さんの身体は十人十色で異なります。例え同じ症状であっても、ある患者さんにうまくいった方法が、別の患者さんで同じように効果があるとは限りません。そうなった時に、どうしてそうなるのか、どのようにアプローチを変えたら効果を出すことができるのかは、免許を取得してからもずっと続く「問い」になります。この「問い」を持ち続け、学び続ける力こそが、鍼灸が驚くような結果をもたらす原動力となるのです。

05多様な鍼を使いこなす

ひとくちに「鍼」といっても、その形や材質、太さはさまざまです。現代のような病院が無かった昔において、鍼は外科的にも内科的にも用いられてきました。そうした目的や用途に応じて鍼はさまざまな変化を遂げていったのです。ということは、多様な鍼を使いこなすことができれば、様々な症状や病態に対応することも可能となります。また、時には刺さずに鍼を用いることだってあるのです。

06火力を自由に操る

鍼が物理的な力で作用するとすれば、お灸はもぐさを燃やして出る熱エネルギーを用いて人体に作用します。火力を決めるのは、燃焼させるもぐさの大きさ、形、密度。さらに、燃焼時間と、補助的な手技です。これらを使いこなして、患者さんの身体が必要としているであろう熱量を見極めて、ピンポイントで熱を送り届けます。火力を自由に操る技術は、人体への効果に大きな影響を与えます。

07分かりやすく響きやすい言葉

患者さんは自分の痛みや辛さを言葉で表現します。それを聞いた上で、鍼灸師は理解した病態と、それに対して自分が行おうとする施術内容を言葉で伝えます。しかし、ここでお互いのコミュニケーションに誤解があれば、適切な施術はできません。そのため、いかに相手の言葉をしっかりと受け止め、その上で伝えたい内容を分かりやすく伝えるかが問われます。患者さんの状況や心情をよく踏まえ、「伝わり、響く言葉」を発することができるよう、日々試行錯誤を続けてください。

08とびっきりの笑顔

患者さんは辛さや悩みを抱え、あなたを訪ねてきます。そんな時、施術する側の鍼灸師はとびっきりの笑顔でお迎えしてください。笑顔は人の不安を払拭させる力を持っています。会っただけで痛みが軽くなるような、そんな明るさと元気さを兼ね備えることができたなら。鍼灸師の究極の姿かもしれませんが、一生をかけて学び続けた先にそのような境地が待っているに違いありません。

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