同窓会主催講演会「中国における伝統医学の現在」

昨年の日本伝統鍼灸学会学術大会で特別講演「中国伝統文化と中国医学」で注目を集めた杉本先生の講演が関東鍼灸で実現することになりました。
この貴重な機会を是非ご活用ください。皆様のご参加をお待ちしています。

タイトル

中国における伝統医学の現在(いま)
-東洋医学再生のために求められるもの-

講師

杉本 雅子先生(帝塚山学院大学教授・北辰会顧問)

1956年岐阜県生
お茶の水女子大学文教育学部文学科中国語学中国文学専攻
卒業後、東京大学大学院人文(じんぶん)科学研究科中国語学中国文学専攻課程修士課程に進学、その後同課程博士課程で単位を修得。
帝塚山学院大学リベラルアーツ学部教授。
大学・大学院時代の専門は中国現代文学だが、近年は「中国人のアイデンティティ」をキーワードに、伝統文化に関する論文が多く、中国語、韓国語にも翻訳されている。
東アジア比較文化国際会議日本支部理事
特定非営利活動法人国際教育センター 役員理事

開催日時

2010年5月30日(日) 14:30

場所

関東鍼灸専門学校 4階ホール

講演要旨

中国における中医学の現状を表す言葉として「中医薬は中国で生まれ、韓国で開花し、日本で実がなり、欧米で収穫される」というものがある。確かに、中国で生まれた中医学は、韓国では「韓医学」として、日本では「漢方医学」として独自の発展を遂げ、現在では「東洋医学」というカテゴリーで世界的に認識されているわけだが、先に挙げた表現は、実は単に現状を表す言葉ではない。中国発祥の医学が東洋医学として全世界に広がっていったという評価を表すものでもない。発祥の地中国での中医学の現状を危惧する表現としてつかわれるものである。本来もっとも盛んであるべき中国で、伝統医学が「伝統」であるが故に存続が危ぶまれ、「百年後、中医は存在しているだろうか?」と危惧する関係者も少なくない。こうした内部の危機感に加え、外部からの攻撃も激しく、数年前には、「中医の医療現場からの撤退」を求める署名活動も展開された。

ある調査によれば、若い中医師のうち、半分以上が中医薬の未来について悲観的であり、最も大きな問題として人材養成の困難さをあげているという。人材養成という場合、まず伝統医学の特徴である「徒弟制度」という方式が頭に浮かぶが、ではこの方式を採用すれば人材が養成できるのだろうか。もちろん、これは有効なシステムである。だが、問題の根は、より大きな教育全体にある。伝統医学は、長い歴史と文化的な伝統をバックボーンにしてはじめて成り立っている。しかし、現在の中国では、大学で習う内容は自然科学に偏り、中医学専攻でありながら、『黄帝内経』も『傷寒論』も読めない、もちろん『易経』も理解できない(読めない)というのが現状である。

この中国の状況を、対岸の火事と傍観するのか、それとも他山の石とするのか――伝統医学である東洋医学を志す者にとって何が必要なのか、いま求められているのは何なのかを、真剣に考える時期にきているのではないだろうか。